<なぜ「加齢のせい」ではないのか?>
「脊柱管狭窄症=年齢のせい」と思い込んでいませんか? 確かに高齢になると背骨の変形や狭窄は起こりやすくなります。しかし実際には、画像で“狭窄”と診断されてもまったく痛みがない方もいれば、軽度の変形でも強い痛みに苦しむ方もいます。 つまり、「年を取ったから痛む」というのは、必ずしも正しくないのです。 この違いを生むのは、骨の形ではなく“体の使い方”や“動き方”です。骨の隙間が狭くても、それをうまく補う筋肉の働きや関節の動きがあれば、痛みが出ないことも珍しくありません。 反対に、姿勢や動きに問題があれば、軽度の狭窄でも神経や軟部組織に負担が集中し、痛みやしびれが強くなるのです。 つまり、「加齢=原因」ではなく、「動きの問題=真の原因」と考える視点が、改善への第一歩なのです。
<狭窄症の原因は「姿勢と生活習慣」に隠れている>
脊柱管狭窄症の症状がある方の多くに共通するのが、日常的な「姿勢の崩れ」です。特に多いのが、骨盤が後ろに倒れ、背中が丸くなる“フラットバック姿勢”。この状態では、腰の自然なカーブ(前弯)がなくなり、重力がダイレクトに腰にかかってしまいます。 さらに、日常の歩き方や座り方も影響します。 歩幅が小さくなっていたり、長時間の前かがみ姿勢が続くと、腰にかかる負担は増える一方です。知らず知らずのうちに、腰まわりの筋肉や関節、神経にストレスが蓄積されていくのです。 これは単に「姿勢が悪い」だけでは済まされません。長年のクセが積み重なり、狭窄部に負荷を集中させ、痛みやしびれを引き起こす要因となっているのです。 つまり、日常生活の中に“原因”がある限り、根本的な改善にはつながりません。だからこそ、「姿勢と習慣」から見直す必要があるのです。
<骨盤・股関節・仙腸関節の連動性がカギ>
腰の症状がなかなか改善しないとき、多くの方が見落としているのが「股関節」や「骨盤」の動きです。 例えば、股関節の動きが硬くなると、本来股関節で吸収すべき動きのエネルギーが、すべて腰に集まってしまいます。特に内旋や伸展がうまくできない場合、腰の関節や神経に余分な負担がかかり、痛みやしびれの引き金になります。 さらに重要なのが、「仙腸関節」と呼ばれる骨盤の関節です。この部分がうまく動いていないと、身体全体の連動性が崩れ、腰が単独で動かされるようになります。すると、腰椎が過剰に動きすぎたり、逆にロックされたりして、狭窄部位にストレスが集中してしまうのです。 腰を守るには、単体で見るのではなく、「骨盤〜股関節〜腰椎」の動きを一つのユニットとして捉える必要があります。これらが連動してこそ、本来のスムーズな動きと負担分散が可能になるのです。
<画像には映らない“軟部組織の問題”とは?>
「検査では異常がないのに、なぜこんなに痛いのか?」 このような疑問を感じたことはありませんか? その理由のひとつが、画像には映らない“軟部組織”の問題です。 筋肉、靭帯、筋膜、神経のまわりにある組織――これらが「硬くなる」「癒着する」「滑りが悪くなる」と、見た目に異常がなくても、動かした瞬間に強い痛みやしびれが生じるのです。 特に神経の“滑走性”が悪くなっているケースでは、体を動かすたびに神経が引っかかったり、圧迫されたりして、激しい痛みが起こることもあります。 これはレントゲンやMRIでは確認できない領域であり、「動きの評価」でしか見つけられません。 「原因が見つからないまま、痛み止めだけが増えていく」――そんな状況から抜け出すためには、軟部組織の状態をしっかりと把握することが欠かせないのです。
<本当の改善は「評価力」で決まる>
狭窄症を改善するために一番大切なこと――それは、的確に「原因を見抜く力」です。 腰の痛みやしびれが出ているからといって、腰だけを治療してもなかなか効果が出ないのは、原因が別の場所にあるからです。骨盤の傾き、股関節の可動域制限、仙腸関節の機能不全、筋膜や神経の滑走障害…。これらが複雑に絡み合って、今の症状を引き起こしています。 だからこそ、まずは「どこに動きの制限があるのか?」「どの組織が負担を受けているのか?」を評価し、それに合わせたアプローチを行うことが必要なのです。 正確な評価ができれば、手術や強い薬に頼らずに症状が改善する可能性は十分にあります。 しかも、再発を防ぐ体の使い方も身につけられるため、「治して終わり」ではなく、「長く健康を保つ」体づくりができるのです。 本当の改善は、「何をするか」ではなく、「どこを見ているか」で決まります。
<まとめ|“加齢”ではなく“動きの問題”を見直すことがカギ>
脊柱管狭窄症は「年だから仕方ない」と思われがちですが、実はそうではありません。 画像に映る変化と痛みの強さが一致しないケースが多いことからも分かるように、本当の原因は“骨”だけでなく、“姿勢”や“動きのクセ”にあるのです。 特に、フラットバック姿勢や骨盤の後傾、股関節や仙腸関節の動きの制限は、腰に過度な負担をかけ、神経や軟部組織にストレスを与えます。こうした動きの悪さや組織の硬さは、レントゲンでは分かりません。 だからこそ大切なのが、「どこが原因かを正確に評価すること」。 評価の力こそが、本当の改善の出発点です。 手術や薬に頼らず、自分の体を理解し、動きを変えることで、症状の改善と再発予防を目指す。 これが、これからの狭窄症に必要な“新しい常識”なのです。