慢性痛は、3ヶ月以上または通常の治癒期間を超えて持続する痛みと定義されます。
急性痛とは異なり、組織損傷が治癒した後も痛みが続くことが特徴です。この痛みは、生活の質に大きな影響を与えます。
慢性痛は、そのメカニズムに基づいて以下の3つに分類されます。
1. 侵害受容性疼痛:組織損傷や炎症による痛みで、変形性疾患、骨折、捻挫、打撲などが原因となります。
2. 神経障害性疼痛:神経の損傷や異常によって引き起こされる痛みで、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症による坐骨神経痛、手根管症候群、三叉神経痛などが含まれます。
3. 痛覚変調性疼痛:明確な組織損傷や神経障害がないにもかかわらず生じる痛みで、痛覚の調整機構の異常が関与しています。代表的な例として、線維筋痛症、複合性局所疼痛症候群(CRPS)1型、過敏性腸症候群、慢性腰痛の一部、慢性疲労症候群などがあります。
慢性痛に対して徒手療法が有効なのは、侵害受容性疼痛(慢性筋骨格系疼痛)です。関節や筋・筋膜、靱帯などの末梢組織に由来する慢性痛では、徒手療法(関節モビライゼーション、筋膜リリースなど)が、可動域改善や痛みの軽減、機能向上に一定の効果を示します。徒手刺激による末梢組織の機械的刺激や、脊髄・脳の鎮痛メカニズム(下行性疼痛抑制系の活性化など)を介して鎮痛効果が得られることが報告されています。
神経障害性疼痛・痛覚変調性疼痛これらの慢性痛に対しては、徒手療法単独での有効性は限定的であり運動療法や心理的アプローチと組み合わせることで、補助的な立ち位置になります。
まとめ
慢性痛のうち、徒手療法が最も有効なのは「侵害受容性疼痛」です。神経障害性疼痛や痛覚変調性疼痛では補助的役割にとどまり、単独での効果は限定的と考えます。