「歩くたびに股関節が痛む」「階段の昇り降りがつらい」そう感じて病院に行ったものの、「年齢のせい」「体重の影響」と言われて終わった経験はありませんか?
実は、こうした説明では本当の原因を見落としているケースが多くあります。理学療法士としての視点で見ると、股関節の痛みは単なる加齢や体重だけではなく、「骨盤の動き」や「筋肉・関節包の使い方の偏り」が関係していることが多いのです。
特に注意したいのが、骨盤の前傾や後傾によって、股関節の角度や動きが変わり、関節に無理な負荷がかかっている状態です。この影響で、痛みが慢性化してしまうこともあります。
また、レントゲンやMRIでは映らない関節の細かな動きや、周囲の筋肉・組織のバランスの崩れも、見逃せない要因です。
つまり、痛みのある部位だけを見るのではなく、「なぜそこに負担が集中しているのか?」を正しく見極めることが、改善の第一歩になります。
股関節の痛みがなかなか治らない…。そんなとき、見逃されがちなのが「骨盤の動きのクセ」です。実は、骨盤の傾きやゆがみが、股関節に大きな負担をかけていることが多いのです。
たとえば、骨盤が前に傾くと、股関節は無意識に伸びた姿勢になります。その状態では、お尻の筋肉や太ももの前側、体幹の筋肉などがバランスを崩し、股関節の一部にばかり負荷が集中してしまいます。
さらに、骨盤の後ろ側にある「仙腸関節」が不安定になると、周囲の筋肉が必要以上に頑張ってしまい、関節を内側や外側に引っ張ります。これが原因で、股関節の内圧が高まり、ちょっとした動作でも痛みが出やすくなってしまうのです。
「股関節の前が痛い」「後ろがズキッとする」と感じる方の多くは、このような骨盤と股関節の動きがうまく連動していないことが原因です。
特に、内股や内側に重心がかかる方は、股関節の受け皿が狭くなり、骨同士がぶつかることで早い段階から痛みが出ることもあります。
こうした股関節痛の多くは、画像では映らない“動きのエラー”に原因があります。
たとえば、股関節を胸に近づけるように曲げていく「トーマステスト」では、90度まで曲がらない、または反対側の脚が浮いてしまうことで、骨盤の動きや筋肉の緊張状態が読み取れます。これは、関節単体だけでなく、骨盤や筋肉が一体としてうまく働いていない証拠です。
さらに注目すべきは「どの動作で痛みが出るか」です。歩き始めの一歩、片脚での立位、立ち上がる瞬間など、どのタイミングで痛むかによって、骨盤と股関節の連動性や安定性の崩れが見えてきます。
私たちは、こうした「動きのパターン」を細かく分析することで、表面の痛みではなく“根っこ”にある原因を見極めていきます。痛みの本当の理由が分かれば、対処法も明確になります。
【まとめ】
股関節の痛みは、単に加齢や使いすぎが原因と思われがちですが、実際には「骨盤の動き」や「関節の使い方のクセ」が大きく関係していることが多いのです。骨盤が前傾・後傾することで、股関節に余計な負担がかかり、筋肉や関節包にストレスが蓄積されていきます。
また、レントゲンでは異常がないと言われても、日常の動作の中で痛みが出ている場合は、骨や関節だけでなく、「動きそのもの」に問題がある可能性が高いです。
体全体のバランスや連動性に着目し、股関節に負担がかかる原因を探り出すことができます。痛みをただ我慢するのではなく、「なぜその痛みが出ているのか」を正しく知ることで、根本からの改善が見えてきます。
「歩くと股関節が痛い…」と感じたときこそ、自分の身体の動きに目を向けてみましょう。その一歩が、未来の健康な身体づくりにつながります。