迷走神経は、延髄から出発して頭蓋骨の頸静脈孔という穴を通り、頸部を経由して全身に広がる重要な神経です。この神経は、感覚神経、運動神経、副交感神経の3つの機能を持つ神経であり、特に副交感神経としての役割が自律神経系の調整において極めて重要です。
迷走神経は頸部を下降する際、内頸静脈や総頸動脈と並走しながら、食道、心臓、横隔膜、胃、小腸、大腸など多くの臓器に分布します。この広範囲な分布により、迷走神経は呼吸、消化、心拍数の調整など多くの生命維持機能を担っています。
特に、迷走神経が上部頸椎(C1およびC2)の前方を通過するという解剖学的特徴です。この部分が不安定な場合やアライメント(位置関係)が乱れている場合、迷走神経が損傷されたり絞扼されたりする可能性があります。その結果、自律神経系のバランスが崩れ、多岐にわたる症状が引き起こされることがあります。例えば、頭部・頸部、上肢への症状、めまい、立ちくらみなどが考えられます。
さらに、副交感神経としての迷走神経はリラックスや消化促進といった「休息と回復」に関わる働きを担っています。そのため、この神経が損傷や絞扼を受けると、自律神経系全体が交感神経優位となり、不眠やストレス過多など精神的な不調にもつながる可能性があります。
頸部アライメントを適切に保つことは、このような迷走神経への影響を最小限に抑えるために重要です。